橋本剃云

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剃髪・愛の会

【特集】理容室ってこんなところ
──はじめて理容室の門を叩く
女性のために──

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はじめに

プロの人が客の髪を切ってくれるお店には、大きく分けて「理容室」と「美容室」の2種類があります。(ちなみに、「床屋」という言葉もありますが、「床屋」は「理容室」と同義だと考えていただいて結構です。) 法律用語としては「理容所」「美容所」という言い方が正式なのですが、ふだん馴染みのない言い回しですので、当サイトでは「理容室」「美容室」の表記で統一させていただいております。

一般的には理容室は男性客がメインターゲット美容室は女性客がメインターゲットですが、男性でも美容室に通う人はいますし、女性でも理容室をうまく利用している人はたくさんいます法律上も、客の性別で理容と美容とを完全に区別しているわけではありません

法律面の話は【Q&Aコーナー:Q0002】にまとめましたのでそちらを参照していただくとして、もうひとつ、理容室と美容室では、一見したところ同じように思えて、実はそこに流れている「文化」の違いが結構あるんじゃないか、という気がしています。

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そこで今回の特集では、理容室には入ったことがないという女性のかた(と一部の男性のかた)に向けて、「理容室ってのはこんなところだよ〜♪」という話をまとめてみました。

前置き的な部分がけっこう長いので、せっかちな方は 2. と 3. を飛ばして、「1.早分かり・こんなときにはこっちへ」「4.女性の場合の賢い使い方」だけを先に読んでいただいてもけっこうです。

目 次
 
1. 早分かり・こんなときにはこっちへ
2. 理容室と美容室の「文化」の違い
3. 理容室と美容室の見分けかた
4. 女性の場合の賢い使い方
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★早分かり・こんなときにはこっちへ★

まずは「これだけは外せない」というキーポイントを。

●カミソリで剃ってもらう⇒理容室へ

法律面の解説を書いたときにも説明しましたが、理容室ではカミソリで顔や頭髪を剃れるのに対し、美容室では、剃るためにカミソリを使うことはできません。なので、剃髪(いわゆるスキンヘッド)を注文したいときには理容室に行く必要があります。ツーブロックの内側刈り上げ部分を0mmに剃ってもらいたいときも同様です。

●ブリーチ・カラー・白髪染め⇒美容室へ

このへんは理容室でも一部の店では行っています。ただ、白髪染め以外の、ファッションとしてのカラーリングまで手がけているところは、あとで紹介するBarber Shintokoさんなど、本当にごく一部のところだけでしょう。

カラーリングをやっている店では店頭の料金表に「カラー ¥4,000〜」のように明記してあるはずですから、もしその記載がなければ、その店でカラーはやっていないと考えていいでしょう。

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★理容室と美容室の「文化」の違い★

さて、理容室と美容室とでは、冒頭でひとこと述べたように、「文化」の違いのようなものがあります。いろいろと列挙してみようと思います。

●シャンプーが違う

目に見えて違うのが、シャンプーのスタイルでしょう。美容室では通常、ロングヘアの女性でも問題なく髪を洗えるように、首筋を流し台の縁に寝かせて、仰向けの姿勢でシャンプーをします。一方、理容室ではショートヘアの男性客がほとんどなので、シャンプーのための流し台が正面の鏡の下に仕込まれていて、それを引き出したところに前屈みで頭を突っ込んで洗ってもらいます

これは、どちらか一方の方式しか知らない人には一種のカルチャーショックでしょう。

なお、前屈みのシャンプーに頭を突っ込むと当然ながら、お化粧は落ちてしまいます。普段お化粧をされているかたは、サービスが一通り終わった後でメイク直しができるように、最低限のメイク道具を忘れずに持っていくようにしましょう。

●来店時には既にスタイルを決めている客がほとんど

美容室では、自分の番が来て呼ばれたあと、美容師さんと二人で時間をかけて希望のスタイルの打ち合わせをする、ということがよくあります。完全予約制のお店が珍しくないのはそのためです。

いっぽう、理容室に来る客のほとんどは、来店した時点で既に、どういう髪型を注文するのかを決めています。大抵の人は少し伸びた髪を簡単にカットしてもらうだけですし、丸刈りなど大幅なイメチェンをする人でも、少なくとも「丸刈りにする」というところまでは既定事項です。

なので、最新のヘアカタログの類も置いていないところが珍しくありません。待っている間の暇つぶしのための漫画や大衆雑誌だけ、ということもごく当たり前です。

●原則は「予約不要」「指名不可」

一般的な美容室では、じっくりと時間をかけてスタイルを決められるように、あるいは、時間がかかるパーマやカラーリングなどにも対応できるように、「原則として予約制」としているところがほとんどです。完全予約制というところも珍しくありません

(私がふだん使っている路線バスの車内広告で「予約の要らない美容室 サロン×× この先△△バス停下車すぐ」というフレーズがなぜかハッキリと耳に残っているのですが、この言葉の裏を返せば、美容室の場合はそれだけ予約制が一般的だということです。)

一方で理容室の場合、上述のように客は既に希望のスタイルを決めてきていますから、わざわざ予約制にしてひとりひとりの客に十分な時間を確保する必要性はそれほどありません。なので理容室では、「予約は不要、先に来た客から順にカット席に呼ばれる」という方式をとっているところが大半です。

そして、その方式ゆえの必然的な成り行きとして、複数の理容師がいる店でも、その中の特定の人を指名することはできません。スーパーのレジと同じように、先に来ていた客をひとり仕上げて手が空いた理容師のところに、次の客が案内されます

なので、毎回違う人にカットしてもらうことになります。髪質に癖があったり、あるいは特殊なスタイルにしていたりして、何か注意を要する人の場合、毎回同じことを説明しなければいけないというのは少々しんどいでしょう。(ひとりひとりの客のためにカルテを作っている、ということもまずありません。)そういう人の場合、一人の理容師さんだけで切り盛りしている(=いつもオーナー理容師さんが担当してくれる)店を選ぶのが無難です。

●カット中はじっとしたまま

美容室では、長い髪を少しずつカットしてもらったり、あるいはパーマやカラーなどで待ち時間が発生したりするときに、客がカットクロスから手を出して雑誌などを読むことがあります。最近ではスマホを操作している人も多いでしょうか。

でも、これも理容室ではNGです。理容室の客の大半はショートヘアの男性なので、理容師さんがカットしている間に客が手を外に出したら邪魔ですし、頭部が動いてしまうと理容師さんの手元が狂って思わぬ結果になりかねません。カット中はクロスの内側に両腕をしまったまま、ひたすらじっと待つことになります。

●お茶はたぶん出てこない

美容室では、お客さんと美容師さんとの打ち合わせの際にお茶やコーヒーなどが振る舞われることがありますが、これも理容室にはない習慣です。

上述のように客は来店の時点で大雑把には希望のスタイルを決めており、自分の順番が回ってきて呼ばれたら簡単に注文を伝えるだけで即カット開始、となるので、お茶を飲んでいる暇などないのです。もしかしたら、順番待ちの人のためのウォーターサーバーとか、店の入口を出たところに飲み物の自動販売機があるとか、その程度ならあながち考えられなくもないのですが、少なくとも私はそういうお店の実例を知りません

●ホームページにBefore&Afterを載せる?

そこそこ評判のいい美容室では、お店のPRのためにホームページなりブログなりを開設して、自店のお客さんのBefore&After写真を載せていることがよくあります。そういうところでは、予約のための電話番号を載せることもごく普通ですし、最近では、予約受付のためのメールやウェブフォーム、LINE公式アカウント、あるいはスマホアプリなどへのリンクを掲載しているところも増えています。

いっぽう、理容室の注文のほとんどは簡単なトリミングなので、ホームページに載せられるだけのBefore&After事例集がなかなか集まりません。なので、そもそもホームページ自体がないお店のほうが一般的です。

●ちょっと異質な例:東京・葛飾区の「Barber Shintoko」さん

とはいえ世の中には、ちょっと「普通の理容室とは異質なお店」もいくつかあります。その代表格が、東京・葛飾区の「Barber Shintoko」さんでしょう。ここはまぎれもなく理容室なのですが、ブリーチやカラーもやっていますし、ホームページにはBefore&After事例集が山のようにあります。

たぶんここは、主に男性客向け美容室的なノリのお店を出したいけれど、カミソリで頭に剃り込みを入れる「レザーアート」と称しています)ためには理容室として営業する必要がある、ということで、現在のようなスタイルに落ち着いたのでしょう。

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★理容室と美容室の見分けかた★

さて、何もなければ一見おなじように見える理容室と美容室、どうやって見分ければいいのか。実は、「ヘアーサロン・タナカ」のように店名だけでは判別がつかない場合でも、下記の手順でだいたい見当がつきます。

●目印1:3色のポール

まず、外から見える位置に赤・青・白の3色のポールが回っていたり、この3色を基調にした看板や扉があったりすれば、そこはたぶん理容室です。逆に、そういうものがなくて、店内が内装にこだわっていたりすれば、そこはたぶん美容室です。

●目印2:料金表

大抵の店では、店の外から見える場所に料金表が掲示されています。その文言にも、理容室特有のものがいくつかあります。

  1. 「総合調髪 ¥*,***」
    この「総合」とは、「カット+シャンプー+ブロー+顔剃りのフルコースで」という意味です。何も言わなければこの注文として扱われます。

  2. 「婦人顔剃り ¥*,***」
    顔剃りは理容室でないと実施できません。

  3. 「スポーツ刈り ¥*,***」
    スポーツ刈りは普通のショートヘアよりも手間がかかるので、少し割増の料金が設定されていることが大半です。

逆に、「ロングヘアは割増料金」といった趣旨の記載があれば、当然ながらそれに該当する人のほとんどは女性客のはずですから、そこは女性客中心の美容室だと推測できます。

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★女性の場合の賢い使い方★

さて、ここからは、女性のかたが理容室を利用するためのアドバイスを具体的に書いていこうと思います。

●その1:「理容室で顔剃りとシャンプーだけ」という女性、けっこう増えています

まず、理容室の最大の特徴は、何はともあれ「カミソリでの顔剃り」です。

そこで、日常的にヒゲを剃らなければいけない男性客のみならず、女性客でも、「顔剃りとシャンプーだけ」という注文をする人が結構います。顔にカミソリ(=むき出しの刃物)が当たるのはコワイ、といって敬遠する人ももちろん多いのですが、逆に、いちど経験したらヤミツキになってしまって、という人も、最近はずいぶん増えています。店の入口の料金表に「婦人顔剃り ¥1,500」のように表示している理容室さん、結構ありますよ。

なお、当然といえば当然ですが、顔剃りをお願いする場合は事前にメイクを落としておきましょう。もし、家を出る時点では他の用事との兼ね合いでメイクが必要になってしまう、という場合は、理容室での順番待ちの間にメイク落としシート(→Amazon)を使ってキレイに落とす、という方法も検討してみてください。

●その2:今まで通りのスタイルのメンテナンスに──「《リニューアル》と《運用》」という考え方──

理容室の大きな特徴のもうひとつが、「早い、安い」を信条にしていることです。この特徴は、個人経営の昔ながらの床屋というタイプの店よりも、「カット+シャンプー+ブロー(+顔剃り)のフルコースで1500〜2000円」というタイプの、安さを売りにしているタイプの店に特に顕著です。というのも、客単価を安く設定してもなお十分な売り上げを確保するためには当然、数をこなさなければならず、それゆえ必然的にテキパキと施術してくれるのです。なので特に、カットの最中の理容師・美容師さんとの雑談がどうも苦手だ、という性格の人には、こういうお店が向いているといえます。

そんな中、こんな指摘を見つけました。

で、今回思ったのはヘアカットというのは「リニューアル」「運用」に分けて考えてもいいのではないかということ。

リニューアル = ガラッとイメチェン
運用 = 現在の髪型を綺麗に維持

リニューアルの際は、やっぱり好みの美容院に行った方がいいのではないかと思う。自分の好みに近い人が、きちんとコンサルティングしてくれて、微調整の時間と精神的な余裕がある方がなんだかんだ安心。

ただ、ちょっと伸びてきたのを綺麗に揃えたいとか、ボブヘアをテイラー・スウィフトあるいはアナ・ウィンターばりに完璧に維持したいとか、そういった運用フェーズではQBハウスでなんの問題もないのでは?というのが現時点での私の結論。カラーとかパーマとか絡んでくるとまた違うのだろうけれど。

髪型の運用を考えた際に行き着いたQBハウスという選択 - shihoscape's diary
https://shihoscape.hatenadiary.com/entry/2018/01/10/072625

引用元のサイトの写真を見ていただければ分かる通り、記事の時点でのこのかたのスタイルは耳出しショートです。そのスタイルをキープしたい耳元や襟足がちょっと伸びてきたからその部分だけカットしてほしい、ということであれば、わざわざ高級美容室に行くまでもありません。このかたのおっしゃる通り、千円カットでも十分に目的を達成できます。

(考えてみれば、あまりファッションに興味のない大半の男性客の注文も、この分類でいえば「運用」のほうに該当しますよね。)

あるいは、もっと髪の長い人の場合でも、たとえば前髪を少しだけ切ってほしいとか、ツーブロックの隠し刈り上げ部分が伸びてきたから刈り直してほしいとか、そういう注文にも理容室はしっかり応えてくれます。

●その3:剃り上げツーブロックは理容室でないとできない

話はまたカミソリの話に戻るのですが、隠し刈り上げにすっかりハマってしまって、バリカンのいちばん短いカットでも物足りないから0mmに剃ってみたい、というかたも世の中にはたくさんいらっしゃいます。そういうかたの場合、カミソリで剃ってもらうためには美容室ではダメで、理容室に行く必要があります。

ただ、長く残す部分の微妙な仕上げについては、一般的な美容室のほうが女性の好みとか最近の流行とかをしっかり把握していて安心できるでしょう。なのでそういう場合は、まずは半年に一度くらい、美容室でお気に入りのスタイルに仕上げてもらってから、剃り上げのために理容室に頻繁に通う、という「理容・美容併用方式」もじゅうぶん検討に値するでしょう。

●注意点:髪の長い人はゴムや髪留めを服のポケットに

さて、髪の長いかた(ここでは「おおむね口元の高さか、あるいはそれよりも下まで髪が伸びた状態」としておきます)がサイドやバックの髪の隠し刈り上げ・隠し剃り上げを注文する際には、ひとつ準備していったほうがいいものがあります。ゴムバンドなりヘアクリップなり、何か「長い髪をひとつに束ねるための用具」を、服のポケットの中に入れていってください。

というのも、こういう刈り上げ・剃り上げの際は、髪全体を上に持ち上げて束ねて、カットの邪魔にならないように適当な方向に流しておく、というのが定石です。でも、ふだんショートヘアの男性客しか来ないような店だと、そのための用具を用意していないという可能性も十分に考えられます。

なので、そういうお店に当たったときには、カット席に呼ばれたらポケットからゴムなりクリップなりを取り出して、いつでも自分で髪を固定できるように準備しておくといいでしょう。

(ただし、もしかしたらカットの前にいちどシャンプーするという可能性もないわけではないので、そのへんは理容師さんとうまく相談してください。)

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以上、理容室についてまとめてみました。貴女も未知の世界を探検するようなつもりで、理容室の門をくぐってみてはいかがでしょうか。

ではでは、今日はこんなところで。

 

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